恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「梓は素晴らしい家庭で、こんなに立派に育てられているじゃないか。なにを卑下する必要がある? うちの両親は、人柄で判断するから不安になる必要はないよ」
「……そうでしょうか」
「俺が言うんだ。間違いない。こんなにかわいくて素敵な女性を俺は知らないよ。ほら、顔を上げて」
言われるままに顔を上げた梓の唇に、一樹の唇がチュッと音を立てて軽く触れる。
「か、一樹さん、こんなときに……!」
「〝人〟を飲むより、俺のキスの方がおまじないの効果はあるはずだ」
思わず眉をひそめて梓が抗議すると、一樹はさらりと言ってのけた。二ッと笑い、梓の頬をつんと突く。
言われてみればそうかもしれない。こんなにも頼もしく、強い一樹のキスならば、ほかのどんなものよりも効果が期待できる。
現に梓は、今のキスで心が軽くなった。
「とにかく大丈夫だ」
一樹に手を強く握られ、梓は微笑みで返した。
玄関のドアを開けると、家政婦らしきエプロン姿の女性が出迎える。そのすぐ後に、一樹の両親は現れた。