恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

智弘からもったいない言葉をかけてもらい、梓は恐縮しつつ「ありがとうございます」と返した。


「次男は昨年結婚しましてね、残すは長男の一樹だと思っていましたが、いやいや、こんなに素敵なお嬢さんを連れてくるとは驚きですよ。しかも多香子さんのお孫さんだというんだからね」
「主人から伺いましたけど、本当に不思議な縁ですね」


智弘に美弥子が続けた。

不思議な縁。本当にそうだと梓も思う。
どちらもそれぞれ結婚して幸せな家庭を築いたのだろうが、その昔、報われなかったふたりの恋心が呼び合ったのかもしれない。


「ともかく私たちは梓さんを大歓迎ですからね」
「ちょっとわがままなところもあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします」


智弘と美弥子から頭を下げられ、梓も慌てて「こちらこそよろしくお願いします」と立ち上がって腰を深く追った。
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