恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
卒倒しそうになった。クラッと目眩を感じてふらつくと、一樹はすかさず立ち上がり、「おい、大丈夫か」と梓を支えながらソファへ座らせた。
「申し訳ありません」
ふぅと息をつき、心を落ち着ける。
ところがいくらそうしても、一樹とここでひと晩明かす〝珍事〟を理解できるはずもない。
「ですが、まだ仕事が残っておりまして……」
創立記念パーティーはまだ終わっていない。
会場の片づけは客船のスタッフたちがやるだろうが、クレアストの上層部たちをきちんと船から降ろすところまで見届ける必要がある。手伝いとはいえ、無責任にはできない。
「具合が悪い彼氏を置いて帰る彼女なんていないだろう? 今ここで梓を帰したら、それこそ三島に見合いパーティーを仕切り直しされるに違いない」
「……たしかにそうですね」
一樹は間違ってはいない。恋人なら付き添っているはずだ。
もしもここで梓が部屋を出ようものなら、てきぱきと職務を全うしている友里恵のこと、すぐに見合いを手配するだろう。