恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
(社長に本物の恋人ができるまで。それまでの間。困っている人を見過ごすわけにはいかないわ。おばあちゃんにも、小さい頃からそう言われてきたんだもの)
梓は背筋を伸ばし、膝の上で両手をそっと重ねた。
「承知いたしました」
真っすぐ一樹を見つめ、強くうなずく。
一樹は優しい笑みを浮かべると同時に、梓の肩を引き寄せ、軽く口づけた。
(……えっ?)
一連の動作があまりにも素早くて、梓は顔を背けることすらできなかった。
「よろしく」
もう一度、一樹に微笑まれ、梓はコクンと首を縦に振るだけ。あとから思い出したかのように心臓がドクドクと鳴り始め、しばらくの間、身動きひとつできなかった。