恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「しゃべらない方がいいって?」
うんうんと大きく梓が頷くと、一樹はクククと肩を震わせた。
「そんなジョークはやめた方がいい」
【ジョークじゃありません】と入力して、再び一樹に画面を向ける。
「だから、見られないって言ってるだろ。そんなふうにするなら、ペナルティを二倍にするぞー」
「えっ、二倍!?」
梓の口から思わず声が出て、一樹が満足そうに笑う。
キスを二倍にするとはどういうことなのか。梓にはさっぱりだ。
「で、誰と同居してるんだ?」
「母と祖母です。祖父は産まれる前に、父は私が小さいうちに亡くなりました」
梓は観念し、スマートフォンではなく口で答えた。
「そうだったのか。女三人で賑やかそうだな」