恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「どうなのでしょう。普通だとは思いますが……」
父親が家庭にいる記憶は、遥か彼方。男の人が家にいるイメージが沸かない。
「母は仕事で家にいない時間が多いので、祖母とふたりの方が多いです」
「じゃ、おばあちゃんっ子?」
「はい、大好きです。祖母からいろいろなことを教わりました」
母親ももちろん大好きだ。
幼い頃から女手ひとつで梓と祖母の多香子を養ってきた陽子には、尊敬と感謝の念でいっぱい。そんな強い母親に自分もなりたいと、梓は常々思っている。
それ以前に、結婚できるかどうかの大問題はあるにせよ。
「しゃ、じゃなくて一樹さんはご家族と一緒にお住まいなんですか?」
うっかり〝社長〟と呼びそうになったが、寸でのところで堪えた。
「両親とひとつ年下の弟がいるけど、今はひとり暮らし」
「弟さんがいらっしゃるんですか」