恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「す、すみませんっ」


穴があったら入りたいという例えは、こういうことを言うのだろう。
自分の間抜けぶりが恥ずかしくて仕方がない。しかもそんな失態を社長である一樹に見られるとは。
仕事でも同様に抜けたところがあるのかと思われたかもしれない。


「しっかりしていそうで、意外とドジなところがあるんだな」


(あぁ……やっぱりそう思われちゃうよね。もうっ、一日の最後にどうしてこんな情けない失敗なんて……)

激しく後悔に襲われながら、梓は「すみません」ともう一度謝った。


「ごちそうさまでした。では私はこれで」


頭を軽く下げて門扉に手をかけたときだった。一樹に引き寄せられ、向き合う格好になる。


「忘れ物」
「忘れ――」

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