恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
聞き返そうとした梓の唇は、一樹に塞がれた。
梓の手からバッグが滑り落ち、ペットボトルがコロコロと転がっていく。
触れるだけのキスは数秒。実際にはどのくらいの長さだったのか、梓にはもちろんわからない。
離れた唇が、やけに熱をもっているように感じた。
「ペナルティ、きっちり科さないとね」
そう言って一樹は片方の目を瞑った。いわゆるウインクだ。
自然な仕草は、それをし慣れていることを物語っている。
友里恵に見せるためのキスという側面もあるペナルティは、一樹にしてみれば、生活の一部のようなものなのだろう。
女性とする挨拶の一環。もしくは、一樹はキス魔なのかもしれない。
「あ、二回だったっけ?」
一旦離れたはずの唇が、もう一度重なる。
腰を引き寄せられ、身体の前面もぴったりと一樹と重なり、逞しい胸板を感じて頬が余計に熱を帯びた。
「じゃ、おやすみ」