恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
それが社長の一樹だとバレようものならば……。
梓は想像するのも怖くて、首を横にふるふると振った。
「まぁそうですよね。地味なお弁当を食べている梓さんとデートは、ちょっと結びつけられない」
「……それはちょっと言い過ぎじゃない?」
もちろん本気で怒ってはいないが、絵梨に軽く釘を刺す。
絵梨の言うように、梓のお弁当にはきんぴらごぼうやひじきの煮物、それから五目煮豆が詰められている。見た目は地味かもしれないが、多香子から教わった大事なレシピだ。
「えへへ。ごめんなさい。梓さんがその気になれば、男の人なんて選び放題ですよっ」
ペロッと舌を出して絵梨がおどけながらお世辞を言う。
そんな仕草もかわいく決まるのは、絵梨ならでは。試しに自分がそうしたところを思い浮かべて、梓は苦笑いだった。
「それはオーバーよ」
「いえいえ、これは本当です。梓さんが本気で彼氏をゲットしようと思っていないだけですし」