代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉



エレベーター前で待っていた社員さん数名と目が合う。
私は堀越社長の近付く顔を思いきり両手で阻止してる態勢だし、副社長も間に入って引き離そうとしてる態勢でフリーズしちゃってる。



「あ…………」



私の大声で何事かとフロアからも覗き込む社員さん達。
ハッと我に返り態勢を戻す3人。
バッチリ見てる待ってた社員さんも苦笑いしながら道を開けてくれた。



誤魔化しようがなく冷や汗タラタラだけど気を取り直し扉を手で止めて秘書として職務を継続する。



「どうぞ」と中の2人を降りるよう促した。
「あ、はい」なんて素直に降りて2人とも背中がかなり動揺してる。
苦し紛れだがもう堂々とするしかない。



「失礼しました」と待たせていた社員さん達に一礼し、視線をかなり感じながらも副社長達の後につく。



「キス」というワード言わなくて良かった……
言ってたら今より地獄を味わう事になる。
想像しただけで貧血が………



部屋へ入るなりまた口喧嘩が始まる。



「お前が変な事言うからあんな空気になっちまったんじゃねぇか…!」



「だってそうだろ?負けた奴は潔く身を引く約束だったはずだ」



アレ………なんか2人が二重に見える……



「うるせぇなぁ!」



「なんだと!?」



「やめてってば…!」



堀越社長が胸ぐらを掴んだからとっさに止めに入る。
だけど余計視界が歪んで……呼吸がしづらい。
頭を抱えたら目の前が真っ暗になり……そのままどっちかの胸に倒れ込んだところで記憶が途切れた。



「深山っ…!!」



近くで副社長の声が聞こえた。
心地良い心音だったから抱きかかえてくれているのは副社長だったらなって……思ったの………



キスなんてしてない………



言わなくてもそこだけは………



信じてくれるよね?







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