代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉
《募る想い、恋焦がれて》



すぐに時間は過ぎていくものだと思ってた。
やらなきゃいけない事たくさんあるし、副社長の代理は想像以上に忙しい。



でも、寂しさやポッカリ開いた穴はどれだけ仕事をこなしても埋められるものじゃない。
鳴らない内線が逆に心を止めてしまう。
気持ちが乱れる。



出張中は毎日電話をくれる。
時差は1時間だけだからほぼ同じ。
テレビ電話で顔を見るたび、声を聴くたび触れられないもどかしさが募る。



「会いたい」って言わないんだね。
顔見れてるから……?
「寂しい」って言ってほしい。
「触れたい」って思ってほしい。
乱れるくらい、呆れるくらい……独占されたい。



困らせてよ………
落ち着かないほどに惑わせて……
いつものようにその瞳の中で溺れたい。




一本の内線が私を呼ぶ。
突然の来客に覚えのない私は名前を聞いた時点で頬がピクリと痙攣した。



1階まで降りて案内係の受付嬢の元へ足を運ぶ。
背を向けて座る女性の姿が目に入る。
ゆっくり近付いて背後から声をかけた。



「お待たせしました、深山です」



私に気付いて振り返り立ち上がるその女性は、シックなセットアップにバーキン、ハイブランドのアクセサリーに身を纏ったゴージャスぶり。



誰かに言われたのか、自分から来たのかはわからないがかなり気まずそうにしている有美子さん。
あれから数日経つけどまだ私の心は静寂ではない。



「本当に秘書…やってんだ」



ネームプレートを見てそう言った。
第一声がこれってどういう状況!?
足元から頭まで見られて「名前も偽名かと思ってた」って堂々たる威嚇。






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