代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉
「ここに書いてある通りに動いてくれ」
俺はそれしか言わなかった。
代行が決まった時点ではなく、秘書に就いた今の時点で手渡すのはズルいと思う。
だけど、イジワルしたくなるのが俺のやり方。
3日経っても覚えきれてなければ罰ゲームとやらを考えておこう。
楽しみがひとつ増えた。
あんなの覚えきれる訳がない。
俺だったら3分の1でさじを投げてる。
それなのに………
罰ゲームどころか、彼女は丸一日で完璧に暗記してきた。
全て試してみたけどどれも一寸の狂いもない。
超短期間で日高 響也(仕事編)をモノにしやがった。
副社長室を出てすぐ近くに秘書のデスクがあり、後ろに他の社員達も多数居る。
(秘書課 深山 紗和)というネームプレートを掲げ、用があれば内線で呼び出す。
全面ガラス張りの喫煙室から少しだけ秘書課が見える。
椅子に腰掛けしばし見惚れていた。
データー入力しながら電話対応、しばらくして立ち上がりどこかに行ってしまった。
デスクに何か立てたから席を離れる事を意味している。
慌ててそれを確認しに足を運ぶ。
秘書課に現れた俺に皆が次々と一礼し、来た事にびっくりしてアウェイな空気感が漂う中、深山のデスクには【資料室】と立てられていた。
普段立ち入らない場所に居るのは居心地が悪い。
周りの目も気になるところだが、これからの俺はそんな事吹き飛ばすくらい深山に気が行ってしまうのだ。