代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉



__レンタル妻、やってみない?



一瞬、携帯を落としそうになった。
えぇっ!?と紗和と一緒に驚いて、ダメだ!ダメだ!と紗和に念を送る。
頼む、断ってくれ…!!



__前に依頼してきた中野さんなんだけど…妻同席のイベントに紗和をお願いしたいってご指名なんだ。ほら、前に婚約者として紹介だけされたんだっけ?そりゃ同じ人じゃないとクライアントも困るよね?ちょうどそっちの契約も更新月だし…手続き待たせたら被る事ないでしょ?



なんてこった…!!
そんな手を使うなんて卑怯だぞ!
紗和は渡さない!俺のだ!
こうしちゃいられない!
気付けば家を飛び出していた。



何で紗和、何も答えないんだよ!
姉貴には逆らえないのか!?
だったら俺がこの際はっきり言ってやる!
クソ……スピーカー音量最大にしてもポケットの中じゃちゃんと聞こえねぇ…!



__それ、どうしても引き受けなきゃダメ…?



__どした?嫌?まぁ、クライアントのご指名だからね……なるべく叶えてやりたいし?紗和が嫌なら断るけど…



そう、そうだ!断われ!!
紗和…今、俺の顔浮かんでくれてるよな?
俺を想って断ってくれんだよな?
信じてる……信じてるぞ?



__お姉ちゃん…ごめん……ずっと言わなきゃって思ってたんだけど



__どした?なに?泣きそうなってんじゃん……わかった、ちゃんと聞くからゆっくり話してごらん



鼻をすする音もして、聞こえた通り泣いてるのか?
紗和、どうしたんだよ。
まだ近くに行けてなくてもどかしい。



ちゃんと会って俺、お姉さんに言わなきゃならない事がある。
先送りなんかじゃダメだ。
二度と繰り返さないように今言うべきなんだ。






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