代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉



「そんな顔しないでください。私はこの処分を真摯に受け止めます。もし今後も弊社を利用されるなら少々、引き継ぎとかでバタバタしてご迷惑をお掛けするかと思いますけど気をしっかり持ってくださいね?」



笑顔でそう言えたのに真っ直ぐ過ぎる瞳は私を離さない。
腕を掴まれる。



「俺が聞いてるのはそんな事じゃないっ…!紗和の気持ちは変わらないんだよな?ここではっきり言ってくれ。じゃないと俺はこの処分は呑めない…!」




「呑めなくても私がそう決めましたから。明日には辞表を提出させて頂きます。次の秘書をどうするかはご自身で決めてください。とにかく、現時点で私はあなたの秘書ではなくなりました」



「紗和っ…!じゃあ俺の気持ちは?本心じゃないだろ?」



掴む手に力がこもる。
痛い……
無責任だよね……私、ズルいよね。
納得してもらえないって最初からわかってる。
特にあなたはすぐ頭に血が上るから。



「未熟でごめんなさい、勝手だとは百も承知です。でも私はあなたから離れたい……です。離れてもう一度自分を見つめ直したいです」



言葉を失う副社長。
そのまま手も下がる。
こうして傷付けて終わるんだ……
最低だ……私。



「俺は認めない……」



かなり落胆した様子で立ち上がり去って行く。
ドアノブに手をかけた時……



「お役に立てず申し訳ありませんでした…!」



自分も立ち上がり頭を下げた。
静かにドアが閉まる。
立ち去った後も私の体は動けないままで、今の気持ちが揺るがないよう必死に食いしばっていた。



姉が背中をさすってくれる。



「カッコつけちゃって……封印したんだね…自らそういう道選ぶとこ、私そっくり」



これで良かったの。
これで……本来の自分に戻れる、お互いに。
好きだって認めた後に別れを切り出すなんて情緒不安定もいいところ。
呆れただろうな。



もうお前なんか好きじゃねぇよって言われる日も近い……



耐えなきゃ………



耐えなきゃ………






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