代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉



「言ったでしょ?私を落とそうなんて百万年早いって」


そう跳ね除けるくせに俺に頭を預けてくる。
え?どっち?
言動と行動が結びつかないからパニックだ。
心臓の音が半端なくてきっとバレてる。



「もうそろそろ時間だから……」



そうだよな……現実なんてこんなもん。
ゆっくり離した体。
繋いでた手ももう元通り。
最後は呆気なくて寂しい。



「車まで送るよ、そこまで羽織ってていいから」



「ありがと」



なぜか女性スタッフが迎えに来ていた事にホッとしてる俺。
まだ遅い時間じゃないから駅前は人が多い。
だからまた目立ってんの。



ジャケットを返してもらい手を振った。



「また連絡するね」



「うん、あっ……」



「ん?」



助手席のドアを開けたまま何か考えてる様子。



「どうしたの?寒いから早く入りなよ」



ギリギリまでジャケット貸した意味ないじゃん。
フッと微笑んだら一旦ドアから離れて半ドア状態に。
どうしたんだろう?と普通に眺めていたら最後の最後、別れ際の乃亜マジックにかかってしまう。



「今日はありがとう、全部のオプションは無理だったけど」



そう言いながらジャケットの襟たてを引き寄せ頬にキスされた。
一瞬過ぎて固まるダサい俺に「またね」と優しく微笑んだ。
そのまま車に乗り込み発車する。
窓から見えなくなるまで手を振ってくれてた乃亜さん。






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