代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉
「あ、伝言で…帰りはいつになるかわからない、だそうです」
申し訳なさそうにそう伝えてくれる受付けの子。
ガクッと肩を落としあからさまにテンション下がる俺。
またおあずけ状態だ。
そんな伝言なら聞きたくないっす。
これ、どういう状況!?
俺は一体何なの?どんな関係?
乃亜さんにとってその程度の相手だったって事!?
俺だけ勝手に舞い上がっちゃって!?
結局はただのクライアント?
何で言わなかったんだよって後で言っても「言う必要ある?」とか平気で言いそう。
散々気を持たすような事してもこっちがその気になったら急に態度変わるタイプだきっと。
ワガママにもほどがある。
もしかして、俺ナメられてる?
男として見られてないならそれはそれで腹が立つから。
別に男を消した訳じゃない。
下手なら下手なりにやってやるよ。
嫌でも意識してもらうからな…!
俺はやっぱり百戦錬磨の俺なんだ…!
足繁く通って限界に達するギリギリの2週間後にやっと駐車場にミラココアが停まっていたのを見た瞬間、当然抑えきれない俺は事務所に押し掛けてしまう。
「お待ちください…!」
受付けの子やスタッフに制止されても止められなかった。
真っすぐ向かった奥の社長室。
勢いよく扉を開ければ、デスクに座る乃亜さんを見つけた。
え?と驚く乃亜さんに制止できなかった事を謝るスタッフ達。
構わず力強く歩み寄る。
初めて怒った。
乃亜さんに見せる素の自分。
目の前まで来た俺に立ち上がる。
緊迫した雰囲気でふざけんなよ…!って叫ぶつもりが、その顔見たら叫びきれなくて思わず抱きしめた。
ふわっと漂う懐かしい香りが脳を刺激する。
柔らかい華奢な体。
抱きしめられながらスタッフに扉をしめるよう合図したかのように見えた。