代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉
「今日はKEYだけもらって帰ります、明日また改めて」
「かしこまりました」
時間も時間だったから急いで帰って着替えた。
そのまま歩いて乃亜さんのマンションに向かう。
インターホンを鳴らしたけどまだ帰って来てないっぽい。
去年はたくさんのクライアントからデートのお誘いを受けていたそう。
だから会えなかった訳だ。
今年は大丈夫だよね?
また誰かのレンタルしてるの?
まさかだよね…!?
最近はしてないって言ってたけど……信じていい?
でも、待てど待てど帰って来ない。
やっぱり会社に行った方が確実だったか?
エントランスを抜け、タクシーを呼ぼうとした途端大粒の雨が降り始めた。
もう一度マンションの方へ走って戻る。
え、どうしようか。
とりあえず屋根のあるスペースに移動したけど結構濡れてしまった。
時刻は夜の10時半。
こんな事なら事前に無理やりでも連絡先聞いておくんだった。
教えてくれないだろうけど。
こんなずぶ濡れだったらマンションの中に居ると完全に不審者扱いだよな。
何人か住人が帰って来てオートロックを解除していくが一緒に中に入る勇気がない。
実はこんな事も初めての経験だったりする。
好きな女に会いに来て外で待たされるとか、連絡先知らないとか、雨にずぶ濡れになっても会えるまで待つとか。
昔の俺ならとっくに帰ってる。
待つのが嫌いだから。
追わなくても寄って来たから。
去るもの追わずな最低な野郎だった。
でも乃亜さんは最初から違った。
追わせるつもりがことごとく俺が追うはめに。
好きにさせるつもりが、寝ても覚めても俺の方が忘れられないでいる。
全部真逆で返されて予想出来なくて……毎回ドキドキさせられて。