代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉
「どうしたの!?ずぶ濡れじゃん…!」
会えただけでもう充分だ。
だから笑った。
嬉しくて自然と笑みがこぼれた。
「乃亜さん、お誕生日おめでとうございます」
「え…?」
時計を確認したら11時20分。
「良かった、間に合って……去年は会えなくて残念だったけど、今年は会えて嬉しい」
乃亜さんの手が伸びて俺に触れようとしたからとっさに避けた。
「おっと……触ったら濡れちゃうから」
「震えてんじゃん……いつから待ってたの?会社に来ないから…今日は会えないんだって思ってた…」
「あ…それは……ちょっと会社でトラブルがあって…思ったより時間かかっちゃって、もう会社には居ないだろうと思ってこっちに直接来ちゃいました。ごめんなさい…」
「バカ……風邪ひいちゃうじゃん」
「あ、それより乃亜さん?これ…」
ポケットから出したプレゼント、まだ手に隠したまま。
手を取ってそっと手のひらに握らせる。
小さなケースに入った鍵。
ピンクのリボンをつけてもらってる。
「え……?」
「開けてみてください」
やっと、やっと驚く顔が見れる。
ちゃんと目に焼き付けるから。
最高の笑顔見せてくださいね?
「え、ちょっと……これって」
びっくりして俺を見上げてる。
「俺の気持ちです。受け取ってください」
「え、こんな高いの貰えないよ…!」
「乃亜さんに似合うと思って選びました。ダメ…ですか?」
「ダメも何も……普通こんな事しないでしょ?」
「俺、普通の感覚わかんないんで」
「とにかく、受け取れないよ」
「えっ……!」
「泣いても無理…!私、こんな事してもらうレベルの相手じゃないから」
返そうとするから手を後ろに引っ込めて距離を取った。