代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉



「ふーん………ありがとう、凄く嬉しいよ」



「本当に!?ヤッタ!」



その笑顔で何でも頑張れちゃう。
本気で惚れるってこういう事なんだよな。
周り見えなくたっていいじゃん。
それくらい好きになるってなかなかないと思うんだ。
乃亜さんだけだから。



「あ、そうだ。1つお願いがあるんだけど」



その言い方、めちゃくちゃ可愛いから。
今の俺なら何でも叶えてあげるぞ?



「何?」



チラッと時計を見たらまだ12時前。
日付は変わってない。



「ハッピーバースデー歌って?」



「え……?」



意外なお願いにちょっと拍子抜け。



「恥ずかしいけどアレ……結構好きなんだ」



照れる仕草も全部可愛い。
間違いなく今の乃亜さんは俺だけのもので、俺だけが祝えてる時間。
バスタオルかぶったままだけど……
コホンと喉の調子を整える。



「心を込めて歌うね?」



より近くに座り直す乃亜さんに終始ドキドキしながら隣で歌う。
意外と歌も自信あるんだぜ?
甘く囁くように……乃亜さんだけに向けて。



「ハッピーバースデー♪トゥ〜ユ〜♪ハッピーバースデー♪トゥ〜ユ〜♫」



ニコニコしながら聴いてくれる。
おい、何だよ…この幸せな時間は。
俺だけを見て微笑んでる。
ヤバい……頭の中、乃亜さんでいっぱい。
ツーッと光るものが見えた気がした。



え…?もしかして泣いてる…?



気付かれないように再び髪を拭き始める乃亜さん。
バスタオルで俺の目を隠す。
こんな歌で泣いてくれるんだ……
ハッピーバースデーディア乃亜さん♪



最後のフレーズ……歌うね。



「ハッピーバースデー♪トゥ〜………ユ〜♪」



白のバスタオルで覆われた視界。
どんな顔してくれてるのかは確認出来なかったけど温かくて…柔らかいものが唇に触れた。






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