代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉



以前、姉が説明していた事だろう。
どこから見ていたのかわからないけど、もうバレバレのようだ。
明後日からまた顔を合わすのに変なところを見られてしまったみたい。



また一歩近付いて……



「もうあんな代行するなっ!お前は俺の秘書だろ!俺だけを見てろよ!」



「ちょっと…!」



大きな声にびっくりしてとっさに副社長の口を塞ぐ。



「誰が聞いてるかわからないのに大きな声出さないでください」



チラホラこっちを見ている人達だって居る。
カップルの痴話喧嘩だと思ってもらったらセーフだけど、私自身が代行業社だとバレれば今後の商売に響く可能性があるの。
なぜか血が上っている副社長をなだめるハメになるなんて…ツイてない。



塞いでた手を取られ、戻そうとしても握ったまま動けない。
ついさっきまで怒っていた瞳が一変、哀愁が漂っている。
またあの瞳だ………
迂闊にもハマってしまう………



「もう…あんなふうに……誰とも手を繋ぐな」



手が離れる。
視線を逸らし俯く横顔が綺麗で…瞬きさえ忘れてしまうほど。


「俺以外…見るな……もう二度と、他の奴にあんな顔するな。俺はお前の時間を買ったんだ…足らないならいくらでも買う…だから……」



なんて……弱々しい声。
自分が何言ってるかわかってるよね?
シラフだよね?この人……
再びあの瞳に捕らわれる。



「俺だけの、深山紗和で居ろ」



会社では一度も見た事がない表情に一瞬、胸がザワついた。
でも、こういった状況でのぼせて勘違いしちゃうクライアントの目を覚ませてあげるのも代行業務の1つにあたる。






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