代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉



「とにかく深山、来い!」



「はいっ!」



背中がめちゃくちゃ怒ってるよ……
ドアを閉める音が全てを物語っている感じ。
小走りで後を追いかけ副社長室へ入る。



一番奥のデスクにもたれながら腕組みして立っている。
片手で来いと指で招かれ恐る恐る前に立った。
鬼の形相は変わってない。



「距離が近いんだよ」って言うから「すみません」と一歩下がったのに「違う、そうじゃない」って腕を引っ張る。
再び目の前に立たされたけど、どこ見ていいかわからないくらい顔が近い。
言ってる事もよくわからないし。



「教えるのもいいけど男の場合はもっと距離を取れ、勘違いするだろ。顔が近過ぎなんだよ……ったく」



え、私、なにで怒られてる?



「常に自覚しろよ、お前、俺の秘書だぞ」



あれ?右目が痛い……
パチパチ瞬きしてもゴロゴロ感。
ヤバ……ゴミ入ったかな?
こんな時に最悪だ。
少し俯き必死に瞬きするも状況は変わらず。
目薬さしたいけど今はそれどころじゃない。



「お前が思ってる以上に男ってのはな………ってオイ、聞いてるのか?」



ゴロゴロ感に必死に耐えていた為、涙がツーッと頬を伝った。
おまけに鼻の奥もツーンとしてそろそろ限界。
乾く眼球に潤いを生み出そうとして自然と涙が溢れる。


「おいっ…!」と肩を揺さぶられた時……
頬を濡らしながら鼻をすする私。
ダメだ…話聞いてなかったのバレバレだ。
また怒られる…!
もう顔見れない…!






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