代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉



「あげない………」



そんな悲しそうに見られても出来ない事は出来ないの。
わかってるくせに。



「好きだから…そう簡単にはあげない」



反応するってわかってたはずなのに言ってしまった言葉は戻らない。
グッと近付く顔をとっさに避けた。
ヤバ……仕掛け過ぎた。
あとコンマ1秒遅ければキスされてたに違いない。



「ごめん、見張りも居るのに軽率だった」



本当は見張りなんて居ない。
でもそのていで動いてる。
その方が安心だから。
「ううん」と首を振りニッコリ笑う。
安心させる為にまた指を絡ませた。




互いに理解し合って今を迎えてるはずなのに、一瞬のうちに道を外れそうになってる。
何度もハッと気付く。
それの繰り返し。



その一瞬一瞬で許してしまいそうになる自分が怖いよ。



あの瞳が苦手とか思っていても本当は射抜かれてる。
それを認める事はもう一人の自分が許さない。
割り切れてない自分に落胆しながら、本来の自分を止められずにいるの。



仕事を取るか、本能に従うのか……



答えが見つからないままデートは終盤を迎える。




何事もなかったかのように振る舞うのは得意な方かも知れない。
話題ならいくらでも変えれるし会話の続かせ方も熟知している。
レンタル彼女をするようになってから自然と身についていた。



日が落ちかける夕刻。
繁華街を歩いている。
もう少しで私達の時間は終わる。
この手を離したら元の関係に戻るんだよね。






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