代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉
「神戸製鉄、堀越社長がお見えになりました」
内線するとビシッと格好良くキメた副社長が颯爽と出て来る。
朝とは180度違う姿に皆も安堵していた。
アドレナリンでも出てるのだろうか?
私や他の社員達に向かって「いつも通りね」と言って自ら迎えに下の階まで降りていく。
「何もしなくていいから」とも言われたけど、秘書技能検定1級の私にとってそれは耐え難い事なんだけどな………
気にしないようにしようと電話対応をしていた時の事。
フロアに到着するや副社長が見張りに着いてる状態で部屋まで行く途中。
ピタッと私のデスク前で堀越社長の足は止まったのだ。
電話対応しながら目が合う。
必死に腕を引っ張る副社長に「誰?誰?新人?」と言ってるのが聞こえる。
慣れた手つきで名刺を渡してくる。
それを副社長が取り上げ無理やり連れて行った。
え、何これ。
本当に相当チャラい。
噂通りな人だった。
副社長と並んでかなりのイケメンな事は確か。
あれで社長とか随分派手に遊んでるんだろうね。
給湯室に入っていく副社長を見てすかさず立ち上がる。
「私がしますよ」
「ああ、悪い。持って行くのは俺がするから!」
必死さが伝わって笑ってしまった。
とことん阻止したいらしい。
「終わったら病院ですよ?」
「うん、わかってるよ」
「運転は私がしますので後で鍵くださいね?」
「え?じゃあドライブデート?」
はしゃぐ副社長に「付き添いです」と一喝。
出来上がった紅茶を渡すとビックリされた。