代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉



あ、ダメだ、この人。
話が通じない。
そう思っていたらそっと前髪に触れてきて視線を仰ぐ。



「1stステージでなびかないなんて初めてだよ、この俺を知らないの?狙った獲物は必ず落としちゃうの」



どんなに近くで捕らえられても響かないのは……やっぱりあの瞳じゃないから。
あの瞳、あの声じゃなきゃ………



「じゃあハッキリ言います、全然タイプじゃないし…こういうやり方は好きじゃないです」



真っすぐ伝えると少し怯んだように見えた。
その瞬間、1階に到着し扉がゆっくり開く。
ゼェゼェと荒い息が聞こえてきて、鬼の形相をした副社長が立っていた。



手を掴んだままの状態と近い距離感にこの上ない怒り声で叫ぶ。



「圭介ーっ!!てめぇーっ!!!」



「わかった、わかったよ」と出て行く堀越社長。
取り残された私の手を引いたのは副社長で「大丈夫か?何された?」て必死に心配してくれてるのを見て、一瞬泣きそうになった。



「何もしてねぇよ、ね?深山紗和さん」



ネームプレートしっかりと見られてた。



「手握ってただろ」



「ほんの挨拶だろ」



「いいか?この際はっきり言っとく。この会社で女性を口説くのは止めろ、風紀が乱れる」



よくぞ言った!拍手!!



「回りくどい言い方すんなって、俺の紗和に手出すな、だろ?」と笑う堀越社長。
なっ、なんと!?
事態を余計ややこしくしないで…!






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