ほんとうの私
はじまり
19歳の春。
友達1人を誘って訪れたマンションの一室。
パーテーションで仕切られた漫画喫茶のような小部屋には、パソコンと女の子が部屋で待機する時のためにブランケットやクッションが置いてある。
一面に絨毯が敷いてあり、小部屋は各一畳もないくらいのスペース…それが10個くらいあった。
担当者の男性は慣れた口調で説明し私達を案内している。
「お客さんとこれを使ってチャットしてね。ここにあるものは使っていいから。出勤は好きな時にしていいよ、空いてる部屋を使ってね。」
そう言われパソコンの下にあるボックスに目をやる。
ローターやバイブが置いてあった。
(……。)
ドキッとした。
友達と一瞬目を合わせ、
「今日は見学に来ただけなので…ありがとうございました!」
と、早々にマンションを後にした。
「あーー!! びっくりした!…ほんと焦ったね」
「そりゃそうだよね、あんな時給よくてチャットだけなわけないよね…」
「やめよう」
「だね〜」
なんて会話しつつ、その日は友達ともすぐに別れた。
“男性とチャットをするだけで一日◯万円!”
“友達同士での応募も大歓迎!”
“好きな時間に働ける!”
大人になれば怪しさ満点の広告なのは見てわかるけど、
無知な当時の私は信じてしまっていた。
この時諦めきれず、他の似たような求人を探してしまったことで
どんどん1人で夜の世界に足を踏み入れてしまうことになる。
何でそれほどお金が欲しかったかって
学校で行われる研修にどうしても参加したかったが、その費用が高額だったのだ。
自分で貯めようと思った。
けれど
当時遠方から通学していたため
バイトをする時間がなかった。
地元でも学校周辺でも週末しか働けない上、時給などたかが知れている。
とにかく求人を調べ、
ある求人にたどり着いた。
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