おもかげの頃
「今日はここで終わります。明日からはいろいろ頑張りましょう」

随分ざっくりした先生だなぁ



席を立とうとした時
前に座る男子 さっき睨んだ男子
小和田が振り返る


恐怖と焦りと不安が襲う
何を言われるの?
謝れとか?
全然謝りますけど
何か?


勇気をもって顔を伺う

「あ、やっぱり。昨日保健室で寝てたよね? 自信なかったけど、そうだよね」

ひぃぃ
見られてたんだ


「ひ、貧血で…」
と言い切る前にすかさず

「隣のベッドで何度もトイレに走ってる人がいるなと思って心配したよ。久々に笑いを堪えるのに大変だったな」


「はは…」
笑え笑え笑っとけ


「お大事にね」
と男は優しく笑って去っていった


もう治ってるわ…
ため息をついた

その瞬間
「そうそう、なんか独り言が声に出ちゃうみたいだから気を付けた方がいいよ。じゃあ」
笑いを堪えながらそう告げられようやく姿が見えなくなった


とんだ笑い上戸野郎

声に出てないよね。
思わず口を押さえて確認してしまう。よし。



なんだか最初から弱味を握られたような変な出会いだったのは確かだね
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