堅物社長にグイグイ迫られてます
「えっと、あの、そのですね」

大切な契約書をシュレッダーにかけてしまいました……。と、なかなか正直に言い出すことができない私に、御子柴さんは座っているイスを少しだけ後ろに引くと長い足を組み、軽くため息をつく。

「ほら、早く言ってみろ」

苛立ちを含んだ声で促され、私は覚悟を決めると思い切り頭を下げて謝罪した。

「すみませんでした。佐藤様の契約書を間違えてシュレッダーにかけてしまいました」

言い終えても下げたままの頭を上げることができない。御子柴さんの顔を見るのがこわくて、履いているヒールの爪先部分をじっと見つめていると、しばらくしてからため息と共に低い声が聞こえた。

「お前のことだからどうしてそんなことになったのかはまぁだいたい想像がつく。どうせ俺が頼んでおいた破棄用の書類と一緒にうっかりシュレッダーにかけたんだろ」

「……はい。そんなところです」

私はようやく少し顔を上げて頷くと「すみませんでした」ともう一度謝罪の言葉を口にする。
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