堅物社長にグイグイ迫られてます
「なんだか可愛い理由だったんですね」

私はつい顔が綻んでしまう。まさかお父さんに誉められたという理由が建築家を志した理由だなんて。今のクールな御子柴さんからは想像もできない。

「それならきっと今頃お父さんは大喜びですね。御子柴さんが今ではたくさん賞を貰うほどすごい建築家になって」

そう言い終えてからハッと気がついた。

やばい。
マズイこと言ったかもしれない。

そういえば御子柴さんのお父さんは御子柴さんが建築家をやっていることに反対していたんだった。御子柴さんには自分の跡を継いで御子柴商事の社長になってほしいと思っているのに御子柴さんが建築家になって喜んでいるわけがない。そして御子柴さんはそんなお父さんと対立しているんだっけ……。

それなのに私ときたらつい余計なことを言ってしまった。

ちらっと御子柴さんへ視線を向けると黙ってビールを飲んでいる。

無神経なことを言ってしまって怒ってるかな?

そう不安になるも御子柴さんの今の表情からは何も読み取ることができない。
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