堅物社長にグイグイ迫られてます
例えば、佐原さんはひとつのお肉をじっくりと焼いてから食べるのに対して奥さんは焼けたと思ったらすぐに食べてまた次のお肉を手早く網に乗せる。飲み物も佐原さんはじっくりと決めていたけれど奥さんはいつも決まったものしか飲まないらしく迷わずにそれを注文していた。

それを見て思ったのは、佐原さんがのんびり屋さんなのに対して奥さんは何事にもテキパキとした行動をする人なのかな、ということだった。

「うちの奥さんって俺よりも先になんでもすぐに一人で決めちゃうんだよね」

「分かります。それは二人を見ていてすごく思いました」

「あはは。そっか」

佐原さんが少し恥ずかしそうに笑う。

「付き合い初めの頃はそのことで噛み合わなくてケンカをすることも多かったけど、でも俺とは正反対の奥さんの性格に助けられることもけっこうあってさ。俺が奥さんと結婚を決めたのはそこかな」

そんな答えでいいかな？と佐原さんは困ったように笑っている。

佐原さんの言いたいことはすごくよくわかった。つまり二人は正反対の性格でお互いに助け合って補いあっているのかもしれない。それってすごく素敵なことだと思う。
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