堅物社長にグイグイ迫られてます
「私がシュレッダーにかけてしまった佐藤様の契約書はもう必要ないってことですか?」

そう確認すると御子柴さんは「ああ」と頷いた。

「じゃあシュレッダーにかけちゃっても問題なかったってことですか?」

「問題ないってわけではないが、さほど困りはしない」

御子柴さんはそう答えながらパソコンの電源を落とすと、先ほどまで描いていた図面や書類を全て引き出しにしまい、さっとイスから立ち上がった。

それからデスクの上に積まれている建築関係の分厚い本を何冊か手に取ると壁際の背の高い本棚へと向かう。それを本棚の一番高い場所へ戻しながらぼやく。

「なぁ、百瀬。もっと集中して仕事しろって俺はお前に毎回毎回言ってるよな。お前は一日一回必ず何かやらかさないと気が済まないのか」

「……」

何も言い返せずに俯いている私の隣を御子柴さんが通り過ぎていく。再び自席に戻った彼はイスの背もたれにかけていたジャケットを羽織るとカバンを手に取った。
< 15 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop