堅物社長にグイグイ迫られてます

「まぁ今回は大目に見て許してやる。俺はちょっと大事な約束があるから」

「え、もう帰るんですか？」

いつもならまだまだお説教が続くはずなのにどうやら今日はこれで終わりらしい。

俯いていた顔をパッと上げ、壁影時計に視線を向けるともうすぐ定時の五時半だ。

帰宅をしてもおかしくない時間だけど、いつも最後まで事務所に残って仕事をしているはずの御子柴さんがこんなに早く仕事を切り上げるなんて珍しい。

大事な約束って何だろう……？

「お疲れ、悟」

「お疲れ様でした」

御子柴さんの背中に向かって佐原さんと私が声をかけると、御子柴さんは「お疲れ」という返事を残して颯爽と事務所を後にしてしまった。

とりあえず普段よりは怒られずにすんだけれど……。