堅物社長にグイグイ迫られてます
「ありがとうございます、御子柴さん」

改めてお礼の言葉を告げるけれど御子柴さんはいつものように素っ気ない。

「なんのことだ。俺は、お前に礼を言われるようなことなんてしてないはずだが」

「いえ、私を助けてくれました。だからありがとうございます」

ふふ、と私は小さく笑った。そんな私を御子柴さんは一瞬だけちらっと見たけれど、すぐにまたその視線はパソコン画面へと戻してしまった。

私の知っている御子紫さんといえば常に仏頂面で愛想がなくて、厳しくて怖くて、どちらかというと近寄りがたい雰囲気の人だった。けれど、最近それがだんだんと変わりつつある。

住む家をなくした私に自宅の一室を貸してくれたり、荷物を取りにアパートへ戻る私のことが心配でさりげなく一緒に付いてきてくれたり、美味しくないはずのカレーを全て食べ切ってくれたり、高級ドレスをプレゼントしてくれたり、今もこうしてバレバレの嘘をついてまで私の様子を見に来てくれたり……。
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