堅物社長にグイグイ迫られてます
その週の土曜日は朝から雲一つない晴天でこの季節にしては温かな気温だった。けれど陽が暮れていくにつれて空には分厚い雲が出始め気温も少しずつ下がり始めている。
それはまるで私の今の気分と同じで――――
「いいか。お前は余計なことはなにも言うな。なにか聞かれても極力俺が全て答える。それでももしお前に質問が回ったら、さっき決めたこと通りに話せ。覚えてるか?」
「はい。……あ、えっと、私たち付き合って何年になるんでしたっけ?三年?二年?」
「一年だ。なんでさっき話し合ったことの内容がもう頭から抜けてんだアホ」
アホって……。
仮にも今日一日彼女になるんだからもっと優しくしてくれてもいいのに。こんなときでも御子柴さんは私に容赦ない。いや、こんなときだからこそ余計に厳しくなっているのかもしれない。
今日はこれから午後六時より都内の一流ホテルで御子柴商事の創立記念パーティーが開かれるる予定だ。
私はそこで御子柴さんの彼女として御子柴商事の社長である御子柴さんのお父さんと会うことになっているのだけれど、私たちが偽の恋人であることがバレないように会場のホテルの近くにあるカフェで二人の設定をいろいろと考えていた。