堅物社長にグイグイ迫られてます



御子柴商事の創立記念パーティーから一週間ほどが経ったある日。

カタカタとキーボードを打ちながら私は睡魔と戦っていた。ぽかぽかと暖かな日差しが差し込む午後一時過ぎ。この時間帯はいつも決まって眠くなるのはどうしてだろう。

いくら夜にたっぷりと寝て爽やかに朝を迎えても、お昼過ぎになると絶対に眠くなるから困ってしまう。たぶん私の身体はもうそういうふうにできているんだと思う。

今すぐに寝たいけど今は仕事中。ふりふりと顔を横に降って眠気をなんとか飛ばす。

御子柴さんも佐原さんも打ち合わせで外に出ているため事務所内には私一人だけ。しんと静まっていて余計に眠い。

いや、寝ても一人だからバレないのかな?

少しぐらいならいいよね。手を休ませて目を瞑るだけ。寝てない。少しだけ目を瞑るだけだから……。

―――ドン!

「ぎゃっ!」

突然聞こえた大きな音にビクンと身体が跳び跳ねた。眠気も一気に引いていく。むしろすかっと冴えた。

何事かと思い音がした方を見ると事務所の扉が大きく開かれている。そしてそこにいる人物に心の中でため息をはいた。

「あれ?雛子ちゃん一人?」

現れたのは佐原さんに物件のデザインを依頼しているファッションデザイナーの浮田さんだった。今日も派手な柄物のシャツに、真っ白なズボンがよく似合っている。
< 209 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop