堅物社長にグイグイ迫られてます
「こんにちは浮田さん。佐原さんなら今ちょっと別の打ち合わせで出てます。たぶんまだあと一時間は戻らないと思いますよ」

どうやら浮田さんはまた佐原さんに連絡のひとつも入れずに突然ふらりとここへやって来たらしい。

「そっか。佐原さんいないのか。それなら戻ってくるまで待っていようかな」

そう言うと浮田さんは慣れたように事務所内を移動して、いつものように応接用のソファに腰をおろした。その姿に私は浮田さんにバレないようこっそりとため息をつくと、ゆっくりと腰を浮かした。

「浮田さん。何か飲みますか?」

「それじゃ、いつものいただこうかな」

「分かりました。コーヒーですね。少し待っていてください」

ここはあなたの行きつけの喫茶店じゃないんだから。と、少しムッとしながらもコーヒーサーバーでコーヒーを淹れるとミルクを手に取り浮田さんへと持っていく。

「どうぞ」

「ありがとう雛子ちゃん。お!さすが俺のコーヒーの飲み方分かってるね」

浮田さんはコーヒーがたっぷりと入ったカップの中にミルクをくるくると回しかける。
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