堅物社長にグイグイ迫られてます
私は、浮田さんと少し距離を開けてソファに座り直す。

御子柴さんが戻ってきてくれたおかげで事務所内に浮田さんと二人きりという状況はなんとか回避できた。これでもう食事の誘いも、体を密着させてくることもないとホッとしたのだけれど。

「今日の夜がだめなら今週の土曜日はどうかな?」

浮田さんはさらに私を誘ってくる。

「ミュージカルのペアチケットあるんだけど一緒にどう?」

「ミュージカルですか」

「興味ない?けっこう人気の作品でなかなか手に入らないんだよね」

「えっと……」

ミュージカルなんて一度も見たことないし、正直にいうとそれほど興味があるわけじゃない。

断りたいけど、本当に断っても大丈夫かな?

浮田さんは佐原さんの大事なお客様なわけだし、ここで私が断ったことで気分を害して佐原さんのこれからの仕事に影響したらどうしよう……と、そんな不安が頭を過る。とはいえ、やっぱり行きたくない。

「そんなに人気のある作品ならミュージカル初心者の私よりも他の方を誘った方がいいんじゃないですか?」

「遠慮しなくて大丈夫だよ。俺は、雛子ちゃんと行きたいから誘ったんだから。ミュージカルは午後五時開演だから、そのあとは劇場に隣接するホテルのレストランでディナーもしよっか」

「……」
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