堅物社長にグイグイ迫られてます
やんわりと断る方向に持っていこうとしたけれどどうやら失敗してしまったようだ。ミュージカルのあとにディナーも組み込まれてしまうとは。あまり行きたくはないけれど断り辛いしここは我慢して行った方がいいのかな。

そう思い返事をしようとしたときだった。

「浮田さん。すみませんが、うちの事務員に手を出さないでもらえますか」

いつの間にかすぐ近くに御子柴さんが立っていた。そして手に持っていた資料を私の顔と浮田さんの顔の間にすっと入れて壁を作った。

「百瀬。お前はこの資料のコピーを十部だ」

御子柴さんが、私と浮田さんの顔の前にある資料をひらひらとさせる。どうやらこれをコピーしろということらしい。私はそれを受け取ると、ソファから立ち上がりコピー機へと急いで向かう。

資料をコピー機にセットしていると先ほどまでいた応接スペースから御子柴さんの声が聞こえた。

「佐原が戻るまで話し相手なら俺がしましょうか」

「えっ、いや……ああ!もうこんな時間か。実はこのあと予定が入っているから帰るよ。佐原さんにはまた後日と伝えておいてくれるかな」

そう言って浮田さんはソファから立ち上がった。そのまま出入口の扉に向かって歩いていく背中に御子柴さんが声を掛ける。
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