堅物社長にグイグイ迫られてます
「おい、百瀬。お前、メールを送る相手間違えてたぞ。俺じゃなくて佐原にするつもりだったんだろ」

「え？」

「佐原に伝えるはずのメッセージが俺のスマホに届いてた」

「……あ！」

もしかして浮田さんが来訪したことを知らせるメールを佐原さんのスマホに送ったつもりが間違え御子柴さんのスマホに送ってしまったのかもしれない。

「す、すみませんでした」

私はペコリと頭を下げて御子柴さんに謝罪をする。そして、そういえば以前にも同じようなミスをしてしまったことを思い出す。

たしかあのときは今回の逆で、御子柴さんが事務所を不在にしているときにお客様が来訪したのでそれを知らせようと御子柴さんのスマホに電話を掛けたところ、間違えて佐原さんのスマホの留守電にメッセージを残してしまった。

それに気がついた佐原さんが御子柴さんに連絡をしてくれたことで何とか伝わることができたけれど、あとで事務所に戻ってきた御子柴さんに私はみっちりと怒られてしまったっけ……。

それとまた同じようなミスをしてしまうなんて。

私ってばどうしていつもこうなんだろう。また御子柴さんに迷惑をかけてしまった。

メールの送信ミスという自分の失態に落ち込んでいると、御子柴さんから軽く息を吐く音が聞こえた。

「まぁ今回はお前が間違えてくれてよかったよ」

独り言のようにポツリと呟いた声に私は「え？」と顔を上げる。
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