堅物社長にグイグイ迫られてます
「おかげでお前が浮田さんと二人きりで出掛けるのを阻止することができた。あいつにお前はやらないよ」

そう言った御子柴さんの視線と私の視線が静かにぶつかる。

つまり、それはどういうことだろう？

なにを言われたのか理解できずどう言葉を返せばいいのか迷っていると、御子柴さんの視線は再びパソコン画面を見つめてしまう。

「ほら、早く仕事に戻れ」

私に向かってそう言うと、御子柴さんは図面を広げてそれに視線を落とす。そしてデスクに転がっていた鉛筆を掴むと図面に描き出す。

私も自席に戻ると仕事の続きを始めることにした。けれど、視線が自然と御子柴さんの方へと向かってしまう。

御子柴商事の創立記念パーティーから今日で一週間が経とうとしている。

あれから御子柴さんと御子柴さんのお父さんの関係や御子柴さんの縁談がどうなったのか気になるけれど、御子柴さんからそのことについて特になにも話がないので私は分からない。

さりげなく聞いてみようかとも思ったけれど、最近まともに御子柴さんと会話をしていない。

というのも御子柴さんの仕事が以前にも増して忙しくなっているからだ。どうやら再来年を目途に新しく新設される大規模商業施設の設計を新しく請け負ったらしい。
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