堅物社長にグイグイ迫られてます
そんな彼女を見ているとますます結婚への思いが強くなっていく。汐里の結婚式の帰りにでも俊君にそれとなく話してみようかな。

そんなことを考えながらフォークにパスタをくるくると巻き付けていると、とろりと溶けたチーズを伸ばしながらピザを食べていた汐里が突然「あっ!」と何かを思い出したように口を開く。

「そういえば昨日のテレビに御子柴さん出てたよ」

「テレビ?」

「うん。ほら、夜の十一時頃からやってる番組で……タイトルなんだったかな。それに御子柴さんが取り上げられてた」

「……ああ!」

思い出した。

その番組といえば、毎週いろんな職業のプロフェッショナルを取り上げて密着するものだ。たしか二ヶ月ほど前に御子柴さんを一週間密着取材していたっけ。

「昨日の放送だったんだ」

すっかり見逃してしまった。見たかったなぁ。

「雛子もちらっと出てたよ」

「え!本当!?」

「後ろ姿が少しだけね」

「なんだ」

後ろ姿だけか、と少しだけがっかりとした気分になる。事務所内でもカメラを回して取材をしていたから私も写り込んでいるかなぁとこっそり期待していたけれど。

「雛子って御子柴さんのところで働いて何年になるんだっけ?」

「うーんと、今月でちょうど三年目になるのかな」

ふと汐里に尋ねられ、私は当時のことを思い返す。

失業中だった私を御子柴さんが自分の事務所で雇ってくれたのが三年前の秋の頃。

きっかけは一枚の張り紙だった――――
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