堅物社長にグイグイ迫られてます


「……ん」

目を覚ますと街灯が照らす道を誰かに背負われて移動していた。

この道はたしか御子柴さんのマンションへと向かう途中にある公園の中の遊歩道だろうか。道の両脇には木々が植えられていて、風が吹く旅にカサカサと音をたてて葉が揺れる。

「起きたのか」

どうやら私を背負っていたのは御子柴さんのようで聞き慣れた低い声が聞こえる。

「す、すみません。わっ!」

体を動かした拍子に落ちそうになってしまい思わず御子柴さんの首に手を回してしがみついてしまう。

「おい、苦しい」

「あ、すみません」

御子柴さんの首にまわした手を緩める。

それにしても今のこの状態はどういうことなんだろう。どうして御子柴さんに背負われているのかを少し考えてハッと思い出した。

「ったく、酒弱いくせに飲むからこうなるんだ」

御子柴さんは呆れたようにそう呟くと深いため息をつく。

そうだった。たしかおじさんのラーメン屋でついビールを飲んでしまったあと眩暈がして……。気が付くと今に至る。

たぶんこの状況は、苦手なお酒を飲んで倒れた私を御子柴さんが背負いながら家へと送ってくれているんだと思う。

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