堅物社長にグイグイ迫られてます
「すみませんでした。御子柴さん最近忙しそうだったので美味しいラーメンでも食べて力をつけてもらおうと思ったのに。こんなことになってしまって……」

私のせいで御子柴さんにまた迷惑をかけてしまった。そのことに気分が重くなる。

きっと御子柴さんはこんな私に呆れているに違いない。いつもみたいにお説教をされてしまうのかなと思っていると、

「それはありがとな。うまかったよ。あの店のラーメンもチャーハンも」

意外な言葉が返ってきた。

「本当ですか?元気でました?」

「ああ」

そう言って御子柴さんがふっと笑うのが分かった。

「あ、あの。私、降ります。もう歩けるので」

いつまでも御子柴さんに背負われているわけにはいかない。早く降りないと。けれど、御子柴さんの足は止まらずに歩き続けて私を下ろそうとしてくれない。

「いいよ。このままおぶって帰ってやるから」

「そんなっ。そういうわけにいきません。私重いですし」

「大丈夫だ。お前ひとりぐらい背負うのなんてなんの問題もない」

「でも……」

言葉を続けようとして口を閉じた。本当のことを言うとまだ少しだけ頭がくらくらとしている。ここから御子柴さんのマンションまで歩けるかと聞かれたらその自信はあまりなかった。

「すみません」

「ほら、ちゃんと捕まってろ。落ちるぞ」

「はい」
< 234 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop