堅物社長にグイグイ迫られてます
御子柴さんは私を背負ったまま遊歩道を進んで行く。何だか会話がないのも気まずかったので私はふと口を開いた。

「御子柴さん。ひとつ聞いてもいいですか?」

「なんだ」

「どうして最近になって突然、今まで断り続けていたはずの仕事を請けたりしたんですか?」

「商業施設のことか?」

御子紫さんに聞かれて、私は「はい」と頷いた。

「どうしてだろうな」

御子紫さんが呟く。

「どちらかというと人が住む建物を設計する方が俺は好きだし、自分の事務所を持ってからもそういう仕事を優先してきたけど。突然、思ったんだ。でかいもの作って親父をあっと言わせてやりたいって」

ガキみたいだよな、と御子柴さんはふっと笑う。

やっぱりそうだったんだ。

なんとなくそんな気はしていた。御子柴さんが突然、商業施設の仕事を請けたのは御子柴商事の創立記念パーティーが行われた日のすぐあとだったから。

御子柴さんは何とかしてお父さんに建築家としての自分を認めてもらいたいのかもしれない。
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