堅物社長にグイグイ迫られてます
それからしばらくしてブーケトスのときがやってきた。
「幸せを掴みたい方はどうぞ前の方へお集まりください」
司会の女性の言葉に男女問わず数十人が前に出てくる。私もその中に混じる。
「それではこれからブーケトスを行いたいと思います」
白い花をメインに作られたブーケを手にした汐里が私たちに背中を向ける。一瞬だけちらっと私の方を確認したのか、ばっちりと目が合った。
「それではカウント始めます。さーん、にー、いーち……」
司会の女性の掛け声と共に汐里が大きくブーケを投げた。するとそれは空に舞い弧を描きながら私へと向かって降りてくる。
“雛子が私の投げたブーケを取れたら御子柴さんと付き合う。取れなかったら付き合わない”
ふとさっきの汐里の言葉が頭をかすめた。
絶対に取らないと……!
気が付くと私はそんなことを思って、ブーケに向かって大きく手を伸ばしていた。
そしてあと少しで掴めそうな距離まで落ちてきたときだった。
ドンと後ろから誰かに思いきり体当たりをされた私はバランスを崩し勢いよく前に倒れてしまった―――――