堅物社長にグイグイ迫られてます



佐原さんに教えてもらった御子柴さんの実家は閑静な住宅街の中にある日本風の豪邸だった。

広い敷地のまわりはしっかりとした塀に囲まれていて出入口は重厚な門扉で閉ざされている。

高級住宅地なだけありまわりを見渡せばどの家もそれなりの規模の邸宅ばかりが並んでいるけれど、その中でもやはり歴史のある大企業・御子柴商事の実家は風格が違う。

勢いでここまで来てみたものの、今になって少し怖じ気づいてしまった。

とりあえず少し離れた場所で隠れながら様子を伺うことにする。

カバンからスマホを取り出して時間を確認するともうすぐ午後の六時になろうとしていた。

御子柴さんのお父さんはいつ帰ってくるんだろう。これからまだ先の深夜になることだって有り得る。そうなるとここでの待ち伏せは長期戦になるかもしれない。

「うぅ……寒い」

陽が暮れてくるとさすがに冷えてくる。少しでも身体を温めようと両腕をさすっていたときだった。

一台の黒塗りの車がこちらに向かってゆっくりと走ってくるのが見えた。そのまま御子柴さんの実家の門の前に横付けされる。

運転席から一人の男性が降りてくると後部座席へと回り丁寧に扉をあけた。そこから降りてきたのは、白髪混まじりの髪の背の高いスーツ姿の年配の男性――――御子柴さんのお父さんだ。
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