堅物社長にグイグイ迫られてます
どうやら帰ってきたらしい。

声を掛けるならこのタイミングしかないけれど、思っていたよりも早い帰宅にまだ私の心の準備が整っていない。

それでも頑張れ私。

そう自分を奮い立たせると、門扉を開けて自宅の敷地内へと足を踏み入れようとしている御子柴さんのお父さんのもとへ慌てて駆け寄っていく。

「あ、あのっ」

そう声を掛けると御子柴さんのお父さんと傍に控えている運転手の男性の視線が同時に私へ向けられる。

「君はたしかうちの会社の創立パーティーで悟が連れてきた……」

私のことを覚えているのか御子柴さんのお父さんが気が付いてくれたようだ。

「百瀬雛子です。先日は初対面にも関わらず出過ぎた口を利いてしまいすみませんでした」

まずは御子柴商事の創立記念パーティーでの私の振る舞いを謝罪した。

御子柴さんのお父さんが御子柴さんに向けて放った言葉がどうしても許せなくてつい口を出してしまった。あのときの自分の発言が間違っているとは思わないけれど、御子柴家とはなんの関わりもない私が自分の立場も考えずに出過ぎた真似をしてしまったという反省はあった。

けれど御子柴さんのお父さんはそのことについては一切触れることなく目の前の私に声を掛ける。

「それで？君はこんなところに何をしに来たのかな」
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