堅物社長にグイグイ迫られてます
椿さんがパラパラとファイルをめくっていく。中身は御子柴さんが設計した建物の完成した外観や内観の様子の写真が並んでいる。
「すごいわね。悟はこんなにたくさんの建物を作っているのね。ほら、あなたも見て」
椿さんに促されて渋々といった様子で御子柴さんのお父さんもファイルを手に取る。ページをめくりながら表情を変えずに一枚一枚の写真に視線を落としている。
「御子柴さん言っていました。建築家になろうと思ったきっかけはお父さんに褒められたのが嬉しかったからだって」
そう言うと、御子柴さんのお父さんの視線が私へと向けられる。
「小学生の頃に理想の家というテーマで描いた絵がコンクールで賞をとって、それをお父さんが喜んでくれたことか嬉しかったって言っていました。そのときのこと覚えていますか?」
私の問いに御子柴さんのお父さんはしばらくしてから「ああ」と低く頷いた。
「覚えているよ。まさか私が悟を建築家の道に進めるきっかけを作ってしまったとはな」
「お父さん、お願いします。御子柴さんの仕事を奪わないでください」
お願いします、と私は机に頭がつきそうなほど深く頭を下げる。お願いします、お願いします、と何度も告げる私に「雛子ちゃん……」と椿さんの心配そうな声が聞こえてきた。
やがて御子柴さんのお父さんが深く息を吐き出す。
「君はどうして悟のためにここまでするんだ?君は悟の恋人ではなくて、悟の事務所で働いているただの事務員なんだろ」
その問いに答えるために私は下げていた頭をゆっくりと上げた。
「すごいわね。悟はこんなにたくさんの建物を作っているのね。ほら、あなたも見て」
椿さんに促されて渋々といった様子で御子柴さんのお父さんもファイルを手に取る。ページをめくりながら表情を変えずに一枚一枚の写真に視線を落としている。
「御子柴さん言っていました。建築家になろうと思ったきっかけはお父さんに褒められたのが嬉しかったからだって」
そう言うと、御子柴さんのお父さんの視線が私へと向けられる。
「小学生の頃に理想の家というテーマで描いた絵がコンクールで賞をとって、それをお父さんが喜んでくれたことか嬉しかったって言っていました。そのときのこと覚えていますか?」
私の問いに御子柴さんのお父さんはしばらくしてから「ああ」と低く頷いた。
「覚えているよ。まさか私が悟を建築家の道に進めるきっかけを作ってしまったとはな」
「お父さん、お願いします。御子柴さんの仕事を奪わないでください」
お願いします、と私は机に頭がつきそうなほど深く頭を下げる。お願いします、お願いします、と何度も告げる私に「雛子ちゃん……」と椿さんの心配そうな声が聞こえてきた。
やがて御子柴さんのお父さんが深く息を吐き出す。
「君はどうして悟のためにここまでするんだ?君は悟の恋人ではなくて、悟の事務所で働いているただの事務員なんだろ」
その問いに答えるために私は下げていた頭をゆっくりと上げた。