堅物社長にグイグイ迫られてます
その言葉に俯いていた顔を上げて御子柴さんを見る。

「そんなことで俺がお前を嫌いになれるならもっと前から嫌いになってる。そうできなかったから今もお前が好きなんだよ」

さりげなく言われた【好き】の言葉にトクンと鼓動が跳ねた。

「お前に結婚をすすめられたとき思わず頭に血がのぼった。惚れてる相手に別の女をすすめられて正直かなりムカついた」

やっぱり私は御子柴さんのことを傷付けてしまっていたんだ。

「でもだからってさすがにアレはやり過ぎた。大人げなかったと反省してる。もっと早くに謝ろうと思ったんだが、もしもお前に許して貰えなかったらどうしようかと思ったらこわくて声を掛けられなかった。本当にすまないことをしたと思ってる。むしろ俺の方がお前に嫌われたよな」

そう言って御子柴さんは苦笑を浮かべた。それに対して私はすぐに首を大きく横に振って答える。

「そんなことないです。私だって御子柴さんのことを嫌いになるわけありません」

あのキスは確かに驚いたし少しこわかったけれど、だからといって御子柴さんのことを嫌いになったりはしていない。彼にそんな行動を取らせるようなことを言ってしまった私も悪いから。

「それならお前は俺のことどう想ってる?」

御子柴さんが真剣な眼差しで私を見つめている。

きっと告白の返事を聞かれているのだと思った。それならもう私の中でとっくに答えは出ている。あとは自分の気持ちをしっかりと御子柴さんに伝えればいいだけ。

「私も―――」

「いや、やっぱりいいや」

私の言葉に被せるように御子柴さんの声が響いた。
< 293 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop