堅物社長にグイグイ迫られてます
アパートへ戻ろうかな。

そんな考えが一瞬浮かぶけれど、俊君と浮気相手のいるあの家には戻りたくないし戻れない。

このままでは今夜はどこかで野宿をするしかないのかもしれない。

俊君に浮気をされたショックと、頭から足の爪先まで雨で濡れてしまっている状態で、私はもう物事を普通に考えることができないでいる。 

もうどうでもいいや……。と、すっかり投げやりな気持ちになった、そのときだった。

「―――百瀬?」

背後から聞きなれた声が聞こえた気がして振り向くと、そこには傘をさした御子柴さんが立っていた。

「お前っ、大丈夫か?!」

走りながら掛けよって来くると、雨に打たれてずぶ濡れの私の頭上に、自分がさしていた傘をそっとかざしてくれた。

私は、そんな御子柴さんをぼんやりと見つめる。

どうしてここにいるんだろう……。
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