堅物社長にグイグイ迫られてます
「おい、百瀬。どうしたんだお前」

突然泣きながら抱き付いてきた私に、ポーカーフェイスのはずの御子柴さんが分かりやすく困惑した表情を浮かべている。

でも今の私はそんなことを気にすることができなくて、自分の感情のままさらにきつく御子柴さんにしがみつく。

「助けてください御子柴さん。私、どうしたらいいでしょうか」

顔を涙でぐしょぐしょにさせながら御子柴さんを見上げる。

「帰る家もないし、お金もないし、スマホもないし、傘もないし、どうしたらいいですか私」

「待て。落ち着け。俺にはお前の今の状況がさっぱり分からん」

ポロポロと涙を流しながら抱き付く私と、そんな私をなだめる御子柴さん。そんな私たちをすれ違う人たちが何事かと視線を向けながら通りすぎていく。

泣き崩れる私はもう自分で自分がコントロールできない。雨なのか涙なのか分からない雫が頬をつたい顔はもうぐちゃぐちゃだ。
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